2015年のゴールデンウィークは槍ヶ岳へ行ってきました。
”日本のマッターホルン”、”北アルプスの角”と称される標高3180mの槍ヶ岳。この日本第5位の高峰にGWに登ろうと思ったのは、ちょうど1年前のGWの表銀座縦走時。
過酷な大天井岳登頂後に見た槍ヶ岳の姿があまりにも凛々しくて、来年はあの頂に立ちたいと思った。
その時は、まさか本当に今年挑戦しているとは思わなかったけど、天気もよさそうだし体力があるうちに挑戦できることはしておきたかったので、今年も再び北アルプスへ足を踏み入れてきました。
2泊3日で槍ヶ岳と北穂高を巡る旅。最終日は下山だけだったので、実質2日で槍ヶ岳と北穂高を登るのは相当過酷だったけど、昨年以上の疲労感と充実感に満たされた山行となりました。
まずは1日目、上高地から槍沢大雪渓を経て槍ヶ岳へ―――
昨年のゴールデンウィークの山行――
北アルプスの王道ルートとして人気の表銀座を、テント背負って燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳と回ったのはちょうど1年前。あれから、もう1年か、、、とあっという間な感じしかしないけど、後にも先にもこの山行ほど死ぬ思いをした登山はない。
燕岳を過ぎて1日目も終わりに近づいた大天井岳直下での猛吹雪。。。そもそも大天井岳までの直登をなめていて、あまりの雪の急斜面に怖くなり、視界も悪くて終わりが見えず不安になり、身体は寒くて凍えそうだし……、山の事故ってのはこういう時に起こるもんなんだなと頭をよぎった。
何とか無事に登り終わって、急いで避難小屋に避難して、心が落ち着いてくると同時に湧き上がる自分の未熟さ。その時は達成感なんて全然なくて疲労感しかなかった。
それでも、夕方になると山は晴れてくれて…
偉大な雪の北アルプスを見せてくれた。雪の北アルプスとかもう勘弁とか思ってたけど、一晩寝て頭をスッキリさせ、翌朝改めて穂高から槍ヶ岳までを眺めていると、再び憧れが強くなってきた。
一緒に登ったまさきも同じ気持ちだったようで、「来年は槍だな」と。
こうして翌年のゴールデンウィークの槍ヶ岳登山が決定し、1年後の2015年。
槍ヶ岳を目指す旅が始まった……
~~ 2015年5月2日 上高地~槍ヶ岳~槍沢キャンプ場(ババ平) ~~
今年も日並びに恵まれたGW。今回も5月2日~4日の2泊3日の行程で、槍ヶ岳に焦点を絞りつつも、せっかくの連休なので可能なら近隣の穂高あたりも合わせて登りたいなということで、登山届に書いたスケジュールはこんな感じ。
▼スケジュール
1日目:上高地~横尾~槍沢~槍ヶ岳~槍沢キャンプ場(テント泊)
2日目:槍沢キャンプ場~横尾~涸沢~北穂高岳~涸沢(テント泊)
3日目:涸沢~上高地
1日目と2日目がかなり長丁場できついけど、山の上にテント張るわけじゃないので逃げ道はいくらでもあるってことで、この行程で頑張ることにしました。
3日目は天気予報が思わしくないので下山だけ。
今年初の75Lザック。ザックの写真を側面から撮るあたりが写真センスの無さを露呈してるけど、気にしない。(背面から撮ると、今度はパッキングのセンスの無さがバレるしな…)
準備中は、雪山装備にこの重たい荷物背負って12時間以上の行程を歩けるか不安で仕方なかった、、、
金曜の夜。これから5連休ということで、23時ごろには都内を出発したけど、早くも道路は渋滞気味。もう少し遅ければ完全にはまってただけに、早めに出発して良かった。4時前には沢渡駐車場に着いて軽く仮眠できました。
明け方の沢渡駐車場。4時半には起きて準備し、4時45分に沢渡を出発。さすがにGWなだけあって、広い駐車場も早朝から盛況してました。
上高地まではマイカー規制がかかっているので、ここでバスかタクシーに乗り換え。
バスの始発を待つのも面倒だったので上高地まではタクシーで行くことにした。今回はまさきに加えて、伯耆大山や乗鞍岳をご一緒したあつしも同行。3人なので、割り勘したら運賃もバスとさほど変わらない。
テントザックが入りきらずに荷台半開きのタクシーは、上高地ではごく普通の風景。
5時20分、上高地に到着。釜トンネルのゲートが開くのが5時なので、スタート時間はどうしても5時半ごろになってしまう。
標高1500mの上高地。例年より気温高めとはいえ、早朝はまだ肌寒い。
1日目の行程は標準タイムで14時間オーバー。なるべく先を急ぎたいので、登山届提出してさっさと出発。
上高地も何だかんだ5年連続でやってきているので、ここら辺はもう見慣れた風景。
上高地の中でも観光スポットとして有名な河童橋。日中は観光客で混雑するこの橋も、早朝5時半ならこんなもん。
小梨平のキャンプ場。 2年前にここにキャンプしに来たこともあったけど、それはそれで楽しかった。
山抜きのキャンプは今年の夏にしたいことの1つ。
小梨平からの穂高連峰。雲1つない快晴。今年のゴールでウィークは、ここ2,3年の間では一番天気に恵まれた年なんじゃなかっただろうか。3日間を通して、結果的にはこの日が一番の登山日和でした。
穂高・槍などの雪解け水が流れる梓川。その透明度は限りなく高く、キンキンに冷えているのが見ただけで分かる。
綺麗で日中は涼しげな清流だけど、早朝は寒気しかしない。
しばらくは沢沿いをひたすら歩いて行く。
槍ヶ岳までは22kmの道のり。
先は長い……
上高地から歩いて40分ほどで明神館に到着。角のように尖った明神岳がカッコいい。
次に目指す徳沢までは3.4km。横尾まではほとんど平坦だから、体力的にはそんなにつらくはない。
ただ、その遠さがわかっているから、先を考えるとげんなりする。
道なりにひたすら進んで行く。遅く歩いているつもりは全然ないのに、結構抜かれる。
装備とか見ても何キロ背負ってるの?っていうくらい大きなザックも見かけるし、この時期の上高地は強者ばっかりだわ…。
陽を浴びる穂高岳の岩壁がカッコいい。道のりは長くても雄大な景色を見せてくれるので、頑張って歩いて行ける。
澄んだ青空と岩の峰々。目指す槍ヶ岳はまだはるか先。ここからでは見えない。
7時前に徳沢キャンプ場に到着。
芝生が敷かれた快適なキャンプ場。お気に入りのテント場の1つ。
徳沢ロッヂ。ここのソフトクリームは有名で、来るたびに食べてしまう。今回も帰りに頂きます。
まだ歩きだして1時間半程度なので、休憩せずに進む。明神館、徳沢と過ぎて、次に目指すのは横尾。
足元にたくさん咲いていたのがフキノトウ。ご自由にお取りくださいと言わんばかりにそこら中に咲いてました。
相変わらずの沢沿いの道。景色は徳沢までの道とほとんど変わらない。
ここまで登りは全然ないんだけど、冬靴なもんで長距離の歩きはやや疲れる。道は観光客でも歩けるくらいに整備されているから、軽いスニーカー持ってくるのもありかもしれない。
この時間帯になると徐々に気温が上がって暑くなってくる。梓川へ飛び込みたい意欲も高まる。
徳沢から1時間弱で横尾に到着。個人的にはこの横尾が槍・穂高の登山口という印象。
ここで槍組と穂高組に分かれる。
横尾大橋とこいのぼり。この橋を越えれば涸沢へ。いまだに涸沢へ行ったことがなく、この橋も渡ったことがない…。順調に槍ヶ岳へ登れたら、明日はこの橋を渡って涸沢へ行く予定。
ようやくここで半分。平坦な道をひたすら11kmも歩いてきました。
残り11kmだけど、標高は全然上がっていないので、これからが辛くなってくる。
横尾を過ぎると観光地的な雰囲気もなくなり、登山道には雪も出てくる。
横尾からは涸沢方面へ向かう人が大半で、ここから先は一気に静かになりました。
横尾から50分ほどで一の俣に到着。ここら辺から水の消費量が一気に増えてきて、暑さとの戦いが始まる。
上流へ向かうにつれて川の水もより綺麗になる。春の清流は水量も豊富で心地よいBGMになってくれるのが救い。
重たいザックをぶん投げたくなる衝動が、この川のおかげで少し和らぐ。
一の俣から10分ほどで二の俣。ここから槍沢ロッヂまでは残り30分。
横を流れる清流が本当に綺麗。目に優しいエメラルドグリーン。
槍ヶ岳までの道のりは片道22kmとかなりの長丁場だけど、その大半が沢沿いを歩けるので気分的にはいくらか楽。22kmがひたすら樹林帯とかだったら、おそらく耐えられない…
少しずつ標高を上げていく。それにつれて登山道も雪の量が増えてきて、やっと冬靴の意味が出てくる。
夏を思わせる暑さで雪の崩壊も進む。道も所々狭くて、見えない落とし穴とかあったりするので、要注意。ザック重たいので踏み抜き率高し!
9時半、槍沢ロッヂに到着。槍沢のテント場はここからまだ30分ほど先へ行ったところですが、テントの受け付けはここで済ませておく必要があります。水は無料でもらえました。テント場に水ががない上に、ここから先は槍ヶ岳山荘まで山小屋もないので(殺生ヒュッテはまだ営業してない)、水2リットル汲んでおく。
水2リットル分が加わり、この日一番の重量でテント場を目指す。テント場に着けば荷物デポれるから、残り30分頑張る。
横を流れていた沢はいつの間にか消え、一面雪になってました。
途中、一瞬だけ目指す槍ヶ岳が見えた!
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あまりに遠くて絶望的に感じた…
ババ平までが本当に遠く感じた。たかが30分の距離なのに、少しの登りでさえ汗が噴き出て息が切れる。。
3日間を通して一番エンスト起こしてた時間だったかもしれない…。周りの岩壁の迫力が素晴らしいはずなのに、この時はあんまり景色に目をやる余裕がなかった。
30分とは思えないほど長く感じた槍沢ロッヂからキャンプ場まで。
ようやく着いたようで…
10時15分、槍沢キャンプ場(ババ平)に到着。まだスペースは結構空いていて余裕がありました。
それと使わなかったけど、テント客用にバイオトイレが1つ設置されてました。
先にテント設営を済ませておく。天候も明日まで穏やかなので、軽く平らにする程度。
11時15分、不要な荷物はデポって槍ヶ岳アタック。
だいぶ歩いてきたけど、ここからでも槍ヶ岳はまだ遠い。往復7時間以上かかる距離で、ここから登りも本格的にきつくなってくる。
テント場に正規の水場はないけど、良く見たら少し離れたところに沢が見えていて、水場として利用できそうでした。
先行く人の足跡をたどって、雪渓をひたすら登っていく。ここから槍ヶ岳山荘までは、ひたすらこの槍沢雪渓。
アイゼンはテント場からつけました。
身軽なので、団体さんは抜かして先へ行かせてもらう。軽いってやっぱり幸せだな~
景色を楽しむ余裕も出てくる。迫力ある岩壁の合間を突っ切っていく。
水俣乗越への分岐。右へ行くと東鎌尾根へ通じる登り。自分たちはこのまま槍沢雪渓を進むけど、右へ行く人は東鎌尾根か、、もしくは北鎌尾根か…。いずれにしろまだ自分には行けそうにない方向。
広大な雪渓を登っていく。今年は雪と戯れる山行が多くて、この手の雪渓も少し見慣れてきた感じがするけど、それでも雪の上を歩くのはやっぱり楽しい。
広い雪の斜面だけど、融雪が始まってクラックや落石も潜んでいるので、必ずしも安全な道とは言えない。
実際、下山時にここら辺を歩いていると、登りではなかった雪の塊や岩が散乱していて、残雪期の怖さを垣間見た。
夏には見れない、広大な雪のカール。先週の木曽駒ヶ岳の千畳敷カールに通じるものがある。
夏はこの部分はガレ場になってて色々と迂回しながら進むけど、積雪時は直登できるのがありがたい。
だいぶ登ってるように感じるけど、後ろを振り返るとそうでもないっていう…。
身軽になっても失った体力が戻るわけじゃない。。やっぱり疲れる。
暑くて水分補給も尋常じゃないくらい。
稜線が近いようで、これがまた全然近づかない。
雪山マジックの1つ。2月の宝永山で身に染みるほど学んだ。
日差しが強くて日焼け止めも何度塗りなおしたかわかったもんじゃない。普通なら山に入ると日焼けはあまり気にしないんだけど、GW最終日に山友さんの結婚式があるんで、少しだけ神経質になる。
結果的に顔の日焼けはある程度マシだったけど、唇の日焼けがひどくてパサパサになった。唇はどうしたらよかったんでしょうかね…?
登っているのに、肝心の槍ヶ岳が全然見えてこない。見えてる岩場も槍ヶ岳じゃなくて、前座扱いの岩場。槍さんはラスボス感を備えて、さらに奥で待っております。
前に見えてる斜面をいったん登り切れば、その姿がようやく見える。
写真だとわからないけど、たまにズボッと踏み抜くからそれもあって余計に疲れる。ハマって身動き取れなくなってる人もいました。
後ろを何度も振り返るのは、景色が見たいから……
、、、ではなく、半ば現実逃避。一向に槍が見えないから、せめて登ってきた斜面を眺めて少しでも達成感を得ようと必死。
13時すぎ、天狗原分岐かな?
下から見えていた、いったんの雪の斜面を登り切る。
ここに来て、ようやく槍様のご登場。
ドン!とな。絵に書いたような見事な円錐形。これぞ岩山と言うフォルムで、多くの登山者を魅了する槍ヶ岳。
ようやくその足元まで来た。
ただ、近くに見えるけどズームして撮ってるだけで、距離的にはまだ結構ある。
アプローチが本当に長すぎる……。すでに上高地をスタートして8時間以上経過。
やっぱり簡単には登らせてくれない、北アルプスの角。
横を滑り降りるスキーヤーが羨ましすぎた。あまり考えないようにしているけど、今回は登ったらババ平まで下りないといけない。
スキーならテント場まで数分なんだろうね…
ようやく見えたゴール。遠いけど1歩ずつ頑張るしかない!
まずは槍ヶ岳の手前の殺生ヒュッテを目指す。
上空をヘリコプターが巡回してました。
悲しいけど、どれだけ晴れていようがGWに山の事故はつきもの。すぐ近くの奥穂高ザイテングラートで死亡事故が起きてしまうのはこの3日後。
飛行機雲と槍ヶ岳。風もなくて昼の穏やかなひとコマ。
毎年多くの登山者が魅了されて、あの頂目指して登りに来るのもよくわかる。他に類を見ないほど鋭利な山容を見せられたら、誰でもその天辺に立ちたくなるでしょ。
後を振り返ると常念岳が見えてきた。もう常念の雪はほとんど消えてました。
14時、殺生ヒュッテと同じ高さまで登ってきた。この時期の殺生ヒュッテはまだ営業しておらず、雪に埋もれた状態。
もう本当に疲れたぜ……。1回目に槍ヶ岳に登った時は、今登ってるルートを下山で利用したけど、その時は横尾も徳沢も初めてだったから目を輝かせて歩いたけど、2回目は色々と知ってるだけに辛いなー、、、
小休憩したのち、ラストスパート。稜線までの最後の直登。
これさえ登り切ればもう、終わったようなもんさ…。
疲れていなければ何てことはない距離の斜面だけど、最後のこの傾斜がまたかなりしんどい。
足は動かしているのに全然進んでいる気配がないので、極力上を見ないように一定のスピードで進む。
昨年の表銀座縦走と違って、天気が幸せすぎるほど安定していたので問題なかったけど、去年みたいに吹雪かれていたらこの斜面も登れていたかわかったもんじゃない。(たぶん途中で引き返していた)
今年一番のポンコツっぷりを披露しております( ̄^ ̄) ドヤッ!
3人で登っているけど、基本的にペースは合わせずにそれぞれのスタイルで登る。自分はゼンマイ式で一定のスローペースで登る傍ら、まさきはチョロQ式で一気に登って小休憩、一気に登って小休憩を繰り返すタイプ。
結果的には大抵まさきの方が早く上に到着する。
チラッと横を見たら東鎌尾根へ至る標識が埋まってた。「大天井岳」という文字には機敏に反応するようになったな(笑)
稜線上の雪は融けても雪渓の積雪量はまだ相当なもん。
15時、ようやく、、、槍ヶ岳山荘に到着。本当に長すぎた…。
もう少し早く着けると思ってたけど、前半の体力の消耗が響いた。。。決して早いペースではないけど、まぁ積雪時なら頑張ったほうでしょ。
…と自分を慰めておく。
春を迎える日本の角。
槍ヶ岳山荘からの槍ヶ岳は、ここまで来るとただの岩場と化す。山頂も手が届くほど近くに感じる。
初日で一気に槍ヶ岳までアタックした恩恵が、この空き具合。
下から見ても取り付いているのは3,4人ってところでした。シーズン中の週末ともなれば、大渋滞必須の岩場です。
これでも頑張って雪渓上では抜かした方。下を見て、列をなして登ってくる登山客を見ると、決して後発組ではなかったんだ、と少し安堵する。
ただ、ほとんどが槍ヶ岳山荘泊のはず。ババ平まで下りなきゃいけないのは自分たちくらいだと思うので、まだまだ1日目の終わりは遠い。
槍ヶ岳山荘に着いて、見るべき風景といったらこの裏銀座方面の山々か。
前回槍ヶ岳に登ったのは3年前。その時は裏銀座界隈の山なんて全く登ったことがなかったけど、今は違う。
この2,3年で一通り巡った領域なので、目にする風景、1つ1つの山に思い出がある。膝の負傷で散々な思いをした笠ヶ岳、昨年のメイン山行となった裏銀座からの雲ノ平周回。どれも懐かしい記憶。
槍ヶ岳へ至るアプローチとしては、次に歩いてみたいのが西鎌尾根。この稜線の果てに双六岳が続いていて、残雪の双六岳に関しては去年悪天候で撤退したので、いつかまた再トライしてみたいと思ってる。
見ればトレースも薄らついてるから、GWに西鎌尾根を登ってくる人もいるんだろうか…。
荷物をデポって山頂アタック。下から見てわかってはいたけど、槍ヶ岳本体には雪が全くついていないので、アイゼンとピッケルは不要。ヘルメットと祝杯用のジュースだけ持って行く。
去年、大天井岳から見たときは、まだ真っ白な槍の穂先だったのに…。今年の雪解けの速さは異常。
懐かしい岩場。槍ヶ岳の岩場に関しては、岩場苦手の僕でもそこまで苦にならずに登れるから、見た目ほどは大したことない。
むしろ怖いのが、シーズン中に渋滞するとき。他人が引き起こす落石ほど予想できないものはないから、ヘルメット着用はやっぱりしたほうがいいです。実際、ここまで登ってくる人を見ても、ザックにヘルメット括りつけている人が大半。
ハシゴ、鎖場も数ヶ所あり。
振り返るとなかなかの高度感。岩場は登りは楽しくて、下りが怖い。。。この苦手意識はここ数年、一向に克服できていない。
途中は下りと登りでルートが分かれてくれるので、今回の山頂アタックは待ち時間ゼロ。
ひどいときは槍ヶ岳山荘まで大渋滞を引き起こすので注意が必要です。3時間待ちとかもあるらしい…
すでに時刻は夕方の16時近く。稜線にも陰影が創り出されて、その影がまた槍ヶ岳っぽく鋭利に浮かび上がる。
いつぞや書いたかもしれないけど、自然の景色の移り変わりを敏感に感じ取れるようになったのは登山をしたからこそ得られたものだと思ってる。山が嫌いな人を否定する気は全然ないけど、山に登って自然に対する価値観が大きく変わったのは自分の中での成長の1つ。
僕も山に登る前は、「辛い思いをして登って何の意味があるの?」とか思ってたくらいだしね。やってみないとわからない楽しさってやっぱりある。それを教えてくれたのは、一番最初に登った富士山だったかもしれない。
山頂へ伸びる最後のハシゴ。これに取り付くのも3年ぶり。
あの時は一人で登って一人で達成感味わってたけど、今回は仲間と登ってる。それも大きな違い。以前はテント泊はソロに限るなんて思ってた時期もあったけど、今は仲間と登るほうが断然多い。ソロもソロで楽しいけどね。
そして……
15時40分、上高地をスタートして実に10時間。やっとの思いで槍ヶ岳山頂に到着!!!
長かった…、本当に長すぎた。。。夏場はもっと早く着けるもんなの?上高地からの22kmはやはり尋常じゃないくらい遠かったです (´;д;`)
先客2名ほどの静かな雰囲気で出迎えてくれました。ゴールデンウィークとは思えない空きっぷり。
辛かったからこそ、その頂から見える景色の雄大さには感動の一言。
槍ヶ岳と言えば北アルプスの筆頭格。北アルプスのほぼ全域が見渡せます。中でも裏銀座はまだまだ雪がたっぷりで、白銀の美しい世界を魅せてくれました。
こちらは北鎌尾根。この日に登ってくる人はいなかったけど、自分は挑戦する日が来るのだろうか…。
過酷な旅路よりも目にする景色を求めて山に入るスタンスだから、バリエーションルートとかには今はあまり興味がない。岩場苦手だしね、、、。この日も鋭利な岩稜よりも、奥に聳える薬師岳やら立山連峰に魅了されてた。
確認はできなかったけど、おそらく2週間前に登った爺ヶ岳も見えてたはず。
こちらは大キレットを経ての穂高連峰方面。
この日は無事に槍ヶ岳山頂を踏めたということで、翌日の北穂高岳登頂が現実味を帯びてきた。
偉そうにこうして登山ブログを書いているけど、実は穂高連峰についてはいずれも未踏。2年前の冬に西穂高独標まで登ったくらい。
そして、こちらが昨年のGWに歩いた大天井岳から常念岳へ至るルート。
正直、この景色を見たときはショックだった。
雪が全くない。去年、あれほど苦労して登り切った大天井岳直下の雪の斜面も、すっかり雪解けの様相。今年はおそらく夏道で登れる。
前回とは逆に、槍から雪の表銀座を見届けたかったけど、それは叶わなかったか……。あの苦労は何だったんだっ!!っていう残念な気持ちが強かったけど、去年の大天井岳があってこその今の槍ヶ岳チャレンジがあるわけだから、あの経験は決して無駄ではなかったはず。そう思うことにする。
燕岳から燕山荘までの稜線を拡大。こちらも全く雪がなかった。
この分だと、高山植物の開花も早まりそうな感じだね。
ヘトヘトすぎてもう降りるのさえ億劫だけど、とりあえず槍ヶ岳登頂お疲れちゃん、自分!
手にしているプレートは3年前にはなかったもの。刷新した槍ヶ岳プレート、GWに無事に掲げてやりました。
山頂で乾杯!!!
のどが終始カラカラになるほど水分に飢えていたので、槍ヶ岳山荘で購入して山頂で一気飲み。10時間以上の旅路を終えての至福の時。たまらんぜ~!
個人的にコカ・コーラだろうがペプシだろうが、コーラ350mlを一気に飲めない体質なのでCCレモンでビタミン摂取。
ジュース片手に下界に目を向けると、まだまだ登山客が登ってきてました。
生意気ながらも至福の優越感に浸りつつ、これからテント場まで下りなきゃいけないという現実に目を背ける自分…(´Д` )
槍ヶ岳山頂から見下ろす槍ヶ岳山荘。営業が開始されつつも、まだ一部は雪に埋もれたまま。
山小屋のスタッフは仕事とはいえ、自力で小屋を掘り返してトイレや水場、炊飯や寝具に至るまで整備してくれるのは感謝の一言しかない。山にかける熱量ってのは尋常じゃないんでしょうね…。恐れ入りますm(__)m
個人的には一番見ていて心地よかったのがやっぱり裏銀座方面。夕暮れ時に映える稜線の陰影がまた綺麗でした。
天気も快晴。せっかく360℃の展望が得られたので、穂高連峰から裏銀座までの風景をパノラマ撮影。
誰もいない槍の穂先。GWとは思えない閑散とした槍ヶ岳山頂。初日にここまで登ってくるのはスケジュール的にもタイトになるので、少なかったのかな?
辛いけど、GWの初日に槍ヶ岳山頂まで登り詰めるのはアリだと思います。
30分ほど山頂に滞在して、16時15分下山開始。
下山のほうが高度感あるのは当たり前。
ここ数年で岩場の下山スキルが身に付いていないのは、どうにかしないといかんな…。
16時半過ぎ、槍ヶ岳山荘に戻る。
だいぶ陽も傾いてきました。
この時間になってもまだまだ登ってくる登山客。雪渓はすでに陰になっていて暑さは幾分和らいでいるだろうけど、それでも足取り重くて辛そうでした。
こちらも日没までにテント場まで登らなきゃいけなので、名残惜しいけど槍ヶ岳とはこれでお別れ。
短い時間でしたがいいもの見させてもらいました。1年前大天井岳から眺めた槍の穂先にも立てたし、十分満足。
後ろ髪引かれる思いだったけど、槍沢キャンプ場に向けて下山。
すれ違う登山客やBCの方が懸命に登ってる姿が印象的でした。
自分も登ってきたからわかる、そのつらさ…
夕暮れ時、雲が出てきて槍ヶ岳のシルエットもより一層カッコよく見えました。
青空一面よりも雲が適度にあってくれた方が写真としては映える。
ある程度登山客をやり過ごすと、雪渓には自分たちだけ。
17時すぎ、無人の槍沢大雪渓を縦横無尽に下って行く。雪渓の下りはあっという間。
下山途中、夕暮れに映える空が何とも言えない幻想的な風景を造り出してました。
すでに18時を迎えつつあるけど、無事に槍ヶ岳を登頂できて気持ちは達成感だけ。
クラックなんて軽く飛び越えてやんよ!!
18時20分、まだヘッデン必要ないほど明るいうちに、どうにかテント場に戻ってきました。
この日の行動時間は約13時間。。。テント泊登山が久しぶりな身としては十分よくやった方だと思ってます。
槍ヶ岳の夕暮れのシルエットに感動しつつ、長い1日目は終了。
上高地から一気に槍ヶ岳を目指して、ババ平へ降りる強行プラン。不安しかなかったけど、何だかんだ身体も動いてくれて、無事にスケジュール通りに1日目を終えることができました。
わかっていたつもりだけど、旅を終えての一言としては「上高地からの槍ヶ岳日帰りは遠すぎる…」ということ。
疲れが身体中に響いて翌日の登山ができるか不安だったけど、疲労感以上に充実感に満たされて、この日は21時には就寝。翌日に備えました。
2日目も引き続き過酷な登山スケジュールとなっているけど、まぁ、どうにかなるだろ(笑)
そういうわけで、2日目もまさき、あつしの岳人とともに頑張りまっせ!
アップがなかなか追いつかないけど、後半も色々と過酷な局面があったので、追々書いて行きます。
まずは1日目、槍ヶ岳登頂完了―――
続く、、、
毎度読んで頂きありがとうございます
【日程】
2015年5月2日 快晴
【コースタイム】
上高地(5:20) — 徳沢(6:50) — 横尾(7:50) — 槍沢ロッヂ(9:30) —ババ平・槍沢キャンプ場(10:15~11:15) — 殺生ヒュッテ(14:10) — 槍ヶ岳山荘(15:00) — 槍ヶ岳山頂(15:40~16:10) — 槍ヶ岳山荘(16:40) — ババ平・槍沢キャンプ場(18:20)