遥かなる尾瀬を求めて、標高2133mの会津駒ヶ岳へ登ってきました。
この山の特徴としては、山頂に広がる雄大な湿原。特に会津駒ヶ岳から中門岳にかけての稜線は、山の上とは思えないほどの広大な湿原が広がり、池塘とお花畑が点在する山上の楽園となっています。
本場の尾瀬ヶ原近隣にそびえる至仏山や燧ヶ岳に比べるとやや登っている人は少ない印象ですが、その分静かな山歩きを楽しめます。残雪、紅葉、夏山と、四季を通じて登れるのもいいところ。
個人的には中門岳に至る稜線が一押しなので、ぜひ時間があれば中門岳まで歩いてみてください。
夏の尾瀬・会津駒ヶ岳へ―――
山に登らない人でもその地名は知っている『尾瀬』。
春の花、夏の草原、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季を通じて色々な景観を見せてくれる自然豊かな高原地帯。日本を代表する自然観光地です。
僕自身、毎年一度は訪れている尾瀬ですが、梅雨が明けて本格的な夏を迎えての尾瀬は実は今回が初。四季を通じた楽しめるとはいえ、尾瀬のハイシーズンはやはり夏。その旬な時期をずっと取りこぼしておりました。。
会津駒ヶ岳もこれが2回目なのですが、前回はゴールデンウィークの残雪時期に訪れたので、夏は全く別の景色を見れるだろうと……
そんな期待を込めて行ってきました。
~~ 2016年7月31日 会津駒ヶ岳・中門岳 ~~
会津駒ヶ岳は一応尾瀬に属しているものの、福島県に位置しているので尾瀬の中でもかなり端っこ。
アクセスも本場尾瀬ヶ原に比べると一筋縄ではいかない。
都内を深夜に出発して、会津駒ヶ岳麓の檜枝岐村に入った時にはすでに空が白み始めた頃。
高速を降りてからの下道がとにかく長く、静まり返った檜枝岐村の道路をひたすら進んで行く。
登山口となる滝沢駐車場に到着したのは5時少し前。夏のシーズン中は登山口のすぐ近くまで車を停めることができますが、この時間帯ですでに路駐も発生している状況でした。村は異常なほどの静けさだったのに、ここだけやたら賑やか(笑)
ギリギリ空いたスペースに何とか駐車できて運が良かったですが、満車の場合は下の滝沢グラウンド駐車場に停めることになります。
軽く仮眠して6時ごろに出発。福島県まで遥々やってきましたが、ここも立派な尾瀬国立公園内。
こちらが会津駒ヶ岳の有名な登山道入り口の階段。
早朝発であれば日帰りで登って来れますが、会津駒ヶ岳は駒の小屋という山小屋もあるので、小屋泊をして1泊2日で登る人も多いです。実際、自分も前回訪れた時には小屋泊でした。
その場合、山小屋は完全予約制なのでご注意ください。登山道入り口の標識にもその旨が書かれています。
階段を登って登山開始。ブナの原生林が綺麗な森ですが、最初からそこそこの急登でなおかつしばらくは展望もないので、ここは序盤が勝負所。
風があまり通らないので、夏場は涼しい明け方に登っておいた方がいいです。下山時は灼熱の森と化してたので……
黙々と会津駒の森を登っていく。途中、休憩用のベンチが置いてある場所が1ヶ所ありましたが、それ以外は単調な登り坂です。
ベンチが置いてあるところに水場もあったようですが、登山道から少し外れたところだったので特に確認しませんでした。
登山道には花もちらほら。時間がたつにつれて暑さが厳しくなるのは、まぁ仕方ないとして、、飛び交うブヨだかハエだかがなかなか厄介でした……。
単調な樹林帯はさっさと登るに限る。
1時間半ほど登れば、山の稜線も見えてきた。
木道が現れる頃には展望も良くなってくる。池塘も出てきて、一気に尾瀬の雰囲気が出てきます。
さらっと飛ばして書いてますが、実際はすでに山頂まで半分以上登り切った地点にいます。
この木道に出るまでが本当に正念場。キツイかもしれないですが、どうか頑張ってください。
一転して、樹林帯を越えてからの展望は凄まじい!
後を振り返ると、朝靄がかかった水墨画のような山景色が広がってました。
目指す会津駒ヶ岳山頂も見えてきた。左には小さく山小屋も見えます。
ここまで来てしまえば、あとは楽なもん。気分的にもかなり楽しく歩けます。
景色は一変して草原。木道敷かれた登山道を登っていきます。
樹林帯の中では感じられなかったそよ風がなんとも心地よく、滝のように噴き出ていた汗も自然と引く。
道もここに来て緩やかとなり、花も一気に増えてきます。
イワショウブ
キンコウカ
駒の小屋までの湿原帯で大群生を見せてくれたのがこの黄色い花。
今回の登山で一番見応えがあったのがミヤマリンドウ。
この後の稜線上にもたくさん咲いてました。
どこかの牧草地のような雄大な景色。草原を渡る風の音が癒し系BGMで本当に心地良かった!
夏の尾瀬らしい、緑の草原と青空が何とも美しい世界です。
会津駒ヶ岳からの展望と言えば、すぐ隣にそびえる燧ヶ岳。尾瀬を代表する名峰。
ここから見ると、双耳峰の山容を綺麗に見ることができます。
歩いてきた木道。振り返って見る日光の山々も素晴らしい。
ここだけ切り取ってみたら本場尾瀬と変わらない観光客でも歩けそうな風景だけど、こちらは序盤の急坂を登ってきた人にしかありつけない絶景。贅沢なご褒美が待っていると思えば、序盤の樹林帯もなんて事はない。
8時、駒の小屋に到着。登山口から2時間程度だったので、思っていたよりも時間かからなかったです。(※標準よりは少し早いペースだと思うので、実際はもう少しかかるかもしれません)
前回の残雪の会津駒ヶ岳でお世話になった懐かしい山小屋。
入り口から見える熊皮が有名。こちらの山小屋のご夫婦がまた気さくで親しみやすい方で、受付にいたら挨拶しようと思ったんだけど、あいにくお仕事中で会えませんでした。
この小屋に泊まる場合は最初に言ったように予約が必要。一人布団1枚で寝れるスペースを確保してくれるので、予約さえできてしまえば快適な山小屋ライフを楽しめます。
食事は出ないので自炊する必要がありますが3000円というリーズナブルな料金設定がまたいい!常連さんも多く、お酒を担いで泊まっているみんなで宴会するのが習わしです(笑)
こんな感じで同じ日に小屋に泊まった人たちでワイワイ楽しむのが駒の小屋流。率先してお酒を開けている左の赤い服が小屋のご主人、右に立っている方が奥さんです。
小屋前に広がる駒ノ大池。その背後にそびえるのが会津駒ヶ岳。
会津駒ヶ岳の中でも最も有名な撮影スポット。逆さ会津駒ヶ岳もバッチリ見れた。
当然ながら残雪時期は池は雪に埋まっているので、この池は今回初めて見れました。
季節を変えて登ると、前回との対比もできてそれもまた面白さの1つ。
鏡のように空を映す池。小屋の前は何と穏やかな雰囲気だったことか……
遠くの山並みも美しく、池の周りを彩る花もまた綺麗。
特に目が行ったのはチングルマの穂。
暖冬・少雪の影響で今年は花の開花時期が軒並み早く、チングルマが花から穂へ姿を変えるのも早い気がします。
このチングルマの姿を見ると、個人的には夏の花はそろそろ終わりという感覚なので、少し寂しい気持ちになる。
小屋では団体さんも休憩されていたので、混まないうちに山頂へ。
木道がひたすら続きます。
湿原のお花畑も続く。
本当ならこの時期はハクサンコザクラが旬の時期のはずなのですが、今年は開花が早くて7月末にしてすでに終わってました。変りにミヤマリンドウが満開を迎えてくれていたのでまぁよし。
さらに、会津駒ヶ岳と言えばコバイケイソウが有名なんだけども、コバイケイソウについては今年はハズレ年のようで開花を迎えることなく枯れそうな気配でした。
例年通りなら8月中旬のお盆辺りに満開を迎えるはずなので、その時期に狙ってみるのもありだと思います。
山頂まで続く木道。尾瀬の木道全般に言えるけど、傾斜があるところは非常に滑りやすいので要注意。
誰しも尾瀬の木道で一度は滑ったことがあるはず!
8時20分、会津駒ヶ岳山頂に到着。
背丈を軽く超える立派な標識ですが、積雪時期は標識が完全に埋まるくらいまで雪が積もります。
山頂に立っての展望はやはり燧ヶ岳の雄姿。
眼下には先ほどいた駒ノ小屋と駒ノ大池も見ることができます。この位置からでも池が鏡になっているのが確認できるってすごい…
日光方面の展望も素晴らしい!
右奥に見える突き出た山が日光白根山、左の台形の山が男体山かな。見渡す限り山しか見えないあたり、ここが山深い場所だということを改めて知る。
雪がない時期の山頂はそこまで広くなかったので、軽く休憩して先へ。北側の中門岳を目指します。
山頂は西側の展望が開けていた程度ですが……
ひとたび中門岳を目指すとなれば、この開放感抜群の縦走路!
突然現れるこの雄大な稜線は、稜線フリークにはたまらない景色。中門岳まで2.2kmとなってますが、アップダウンなんてほとんど皆無に近く、稜線を心ゆくまで堪能できます。
同アングルの雪景色も載せておきます。
冬のメローな雪の稜線も良かったけど、緑豊かな夏の景色もまた素晴らしい!
会津駒ヶ岳山頂直下にはニッコウキスゲも咲いてました。
向かって右手にそびえる山が大戸沢山。はるか奥に見える山脈が何なのかはわからなかった……。
尾瀬の名にふさわしい木道散策路が続く。中門岳まではアップダウンもそこまでなく、快適な稜線ハイクが続きます。
残雪時期に至ってはさらにアップダウンが少なく、どこが中門岳山頂なのかもわからないほぼ平坦な稜線を歩けます。
木道脇に咲くミヤマリンドウの群生がとてつもなく綺麗。
大小無数の池塘が広がる湿原の稜線。自然と花の数も増えてくる。
終わりかけではあったけども、ワタスゲも咲き残ってくれていました。
ワタスゲ&尾瀬のキーワードを受けて語らずにはいられないのが、田代山の高層湿原。山上の楽園と呼ぶにふさわしいこのワタスゲ天国は日本国内でも屈指の規模だと思います。
初夏のワタスゲを求めるなら田代山は猛烈におすすめしておきます。
どこまでも続く尾瀬の木道。尾瀬と聞いて大多数の人が思い浮かべる景色って、だいたいこんなもんじゃなかろうか。
今回初めて訪れた真夏の尾瀬。「遥かな尾瀬~」の唄に相応しい、緑と青空が綺麗な世界が広がってました。
ハクサンフウロ
写真の枚数が多くなってしまうので花を全て載せることはしないけども、会津駒ヶ岳は紛れもない花の名峰。至る所で高山植物を目にすることができました。
木道脇に広がる花の楽園
無数に広がる池塘
進むたびに群生の規模を増すミヤマリンドウ。
何もかもが素晴らしい!
綺麗な円形の池。遠くには東北の山々を見渡すことができましたが、山座同定がイマイチできないあたり、まだまだ経験が足りないと思った。
池の周りにはワタスゲや花が広がる楽園風景。
会津駒ヶ岳が目的ではあるけども、中門岳までの稜線もぜひ歩いてほしいところです。あの樹林帯の急登を頑張って登ったのに、会津駒ヶ岳で引き返すのはあまりにももったいない。
しばし木道を歩いた先に広がる大湿原。ここら一帯が中門岳の山頂とされているところ。
山頂というにはあまりにも平坦な場所ですが、これが湿原有する山のスタイル。田代山や苗場山や平ヶ岳と似たものを感じます。
9時過ぎ、中門岳山頂に到着。
目の前に広がるのは中門大池。今回の登山で見た池塘の中では最大の大きさ。
夏の雲と青空を映し出す、鏡のような美しき池です。
ここもまた素晴らしい絶景を見せてくれた。
特に中門岳については残雪時期には山頂がどこかもわからないほど雪に埋まっていたので、初めて訪れたような新鮮な感覚も味わえました。
大池が映し出す森と空がとにかく素晴らしい!
池の脇に咲く花々を見ているとなんとも長閑な雰囲気で、ずっとここにいたくなる。
あいにく中門岳も山頂のスペースはそれほど広くないので、どっしり腰を下ろしての休憩にはやや不向き。
団体さんも来たので、しばし展望を楽しんだ後に引き返す。
これほど穏やかな木道敷かれた稜線であれば、何往復しようが問題なし。
帰りも帰りで楽しい木道散策。
登山日和ということで、たくさんの人とすれ違いました。
帰りは会津駒ヶ岳山頂へは寄らず、巻道で帰ることができます。
最後に振り返って見る中門岳の稜線。
ここは本当に素晴らしい道。日帰り登山の場合は中門岳まで行くとなると往復で2時間弱になるので時間と相談になりますが、ここはぜひ歩いてみてほしいところ。
残雪時期も良かったですが、夏の草原広がる稜線ハイクも素晴らしく気持ちよかったです。
本来ならもう少しすると咲き乱れるであろうコバイケイソウの群生地。
今年はハズレ年ということなので、来年以降に期待します。
駒ノ大池を経て駒の小屋へ戻る。
10時過ぎ、思った以上に早く中門岳まで登って来れたのでここでゆっくり休憩。
午後から天気が崩れる予報でしたが、結局この日は夕方ごろまで快晴だったようです。少し急ぎ足になったけども、こうしてのんびりできる時間を確保できたと思うと、序盤の樹林帯をさっさと登ってしまえて良かった。
暑くなってきたので昼前に早々に下山。歩いてきた木道を戻ります。
駒の小屋からは富士見林道を経てキリンテへ降りるルートもあります。その場合、バスに乗って滝沢駐車場まで戻ってくる必要がありますが、稜線をさらに堪能できるので、そちらのルートを取るのも大いにあり。
この池塘、笑ってやがる!
樹林帯に戻る前に青空と草原風景を存分に楽しんでおく。
こういう風景を見ると、会津駒ヶ岳も立派な尾瀬の一角なんだなぁ~実感します。
12時過ぎ、滝沢登山口駐車場へ下山完了。かなり早めに降りてきたつもりだけど、すでに駐車場は半分ほど車がなくなってました。
下山の樹林帯はすっ飛ばしたけど、とにかく暑くて汗をかいたので早く温泉にドボンしたかった。
下山後の温泉は、登山口からすぐのところにある「アルザ尾瀬の郷」。前回の登山でも入った温泉。
露天風呂しかないですが、広くて快適です。日帰り入浴500円。ここ以外にも近くには駒の湯もあったりと、檜枝岐村は温泉が豊富なので下山後の入浴には困らないです。
なぜか猛烈に舞茸が食べたくなったので、温泉横のお食事処で天ぷらそば注文。
檜枝岐村の郷土料理・裁ちそば。真夏の登山にさっぱりした蕎麦は最高の一品。これも登山とあわせて食しておきたいところ。
温泉と食事を楽しんで空を見上げてみたら、すっかり夏の空模様。
夏の雲はダイナミックでそれだけで綺麗です。
夏らしく、帰り道には雷雨にも合いました(笑)
やはり夏山は午後の天候不良が心配なので、午前中に登っておくに限る。
最後に虹のご褒美をもらって、今回の登山終了。
遥かなる尾瀬。真夏の来訪は今回が初めてでしたが、思い描いていた尾瀬そのままの景色を見ることができました。
青空のもと、緑豊かな草原に敷かれた木道路。これこそ尾瀬本来の姿であると思う。
本場の尾瀬ヶ原と違って、ここに行きつくまでにはそれなりの山登りを強いられますが、だからこそ頑張って登ってから見るこの景色への感動もひとしお。
会津駒ヶ岳へ至る木道路も素晴らしいですが、旅のハイライトは間違いなく中門岳へ至るこの稜線。これほどの湿原広がる稜線ハイクは至仏山でも燧ヶ岳でも味わえないものなので、ぜひ歩いてみてください。
残雪時期とはまるで違う会津駒ヶ岳の姿を見れて、素晴らしい感動を味わえた山旅でした。
会津駒ヶ岳山頂より
おしまい
【日程】
2016年7月31日 快晴
【コースタイム】
滝沢登山口駐車場(5:45) — 駒の小屋(8:00) — 会津駒ヶ岳(8:20) — 中門岳(9:10) — 駒の小屋(10:15) — 滝沢登山口駐車場(12:10)
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